2013年08月26日

9月住職日々随想です

住職日々随想

 先日の朝日新聞「天声人語」の欄に興味深い記事がありました。
夏休みに入り、お子さんや保護者の方々からの質問に、様々な
分野のご専門の方々がお答えになるという企画がなされました。
ある著名な昆虫博士のもとにも、様々な質問が寄せられたのですが、
その中に「台所に蟻が出て困っています。どうすれば良いでしょう?」
という保護者の方からの質問がありました。
 そんな問いに対して普通なら、殺虫剤使用を勧めたり、蟻の通り道を
ふさぎなさい、食べ物、特に甘い物は出しっ放しにしないようにしなさい
とか、アドバイスをすると思うのですが、くだんの博士は「足を下ろす
ときは、十分に気をつけて下ろしてください。」とお答えになったそうです。
長年、昆虫とつきあってこられた方だけに、小さないのちに対しても、
いとおしみの気持ちを忘れずにおられる姿に、思わずほほが緩みました。
 インドで生まれた仏教にも、アヒンサー(不殺生)の戒めは有り、
ミミズや地虫などが多く這い出してくる雨季の期間、僧侶は安居(あんご)
と称して、むやみに出歩かずに一つ処にとどまって修行するという決まりが
ありました。それに習って、現在も形を変え、夏安居という修業期間が
仏教各宗派には伝統されています。
 仏説無量寿経の異本といわれる大阿弥陀経
にも衆生とは、「諸天・人民・蜎飛(けんぴ)・蠕動(ねんどう)のたぐい
に至るまで…」と押さえられています。諸々の天人、人間、蜎はボウフラ、
飛は鳥や羽虫、蠕は蛇やミミズ、動は四つ足の動物と、生きとし生けるもの
が仏陀のみ教えによって救われていくべき存在。皆な如来の一人子である
と敬われています。
その中でも、人間は一番劣った存在であると言われます。えっ、なぜ?
他の生き物は生き方に迷うということは有りませんが、ひとり人間は
生き方に迷うから、一番劣っているのだと教えられます。
しかし又、生き方に迷うからこそ、道を求めずにはおられない存在。
そう、内に菩提心を宿した、最も仏に近い存在なのだ、と教えられているのです。
 人間のおごりを戒め、正しき道に導く仏の深く尊い智慧が、
一層ありがたく思われることです。
posted by ansenji at 15:32| Comment(0) | 住職日々随想
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